2009.11.09 Monday
TBSドラマ JIN-仁-で学ぶ「病いの世相史」 大沢たかお、綾瀬はるか
病いの世相史は、ズバリ、江戸時代の医療事情を詳しく解説した本である。著者の田中圭一先生は新潟県佐渡高校教諭から筑波大学の教授になった異色の学究の徒。そのため新潟県や佐渡島の資料が多い。
まず、多くの人は江戸時代の医療は遅れに遅れており、ましてや佐渡島なんかに医者らしい医者なんていなかっただろうと信じていると思う。迷信と呪術の世界だろうと。
ところがとんでもない、佐渡島にはそば屋より医者の数が多く、しかも貧乏・水飲みと蔑まされている百姓ですら頻繁に医者にかかっていたのだ。それは資料が証明している。
ではなぜ遅れていると思ったのか。それは明治維新によって古いものはすべて悪と決めてかかった、それこそ盲信によるものだった。佐渡には鉱山があったためもあり、医者の数は他と比較しても多かったとは言え、江戸時代から各地に医者は豊富にあり、庶民はちょっと怪我をした、腹痛だ、ヘンな小便が出たと、医者に罹っていたのだ。
医者は動植物や鉱物資源を薬とし、経験によってそれらを患者に与えていたし、人々もこういうときはどうすればいいという治療方法をさまざま身につけていた。医者に至っては導尿カテーテルまで行っているのである。
もちろん、今から見れば間違っているところもあるのだが、それはそれぞれの時代のなせる悲劇であろう。
さらには江戸時代の平均寿命は50歳くらいと言われているが、どの村にも70,80歳の老人がいた。人の半分は50歳を超えて死んだのである。
ではなぜ平均寿命が短いのかというと、乳幼児の死亡率が非常に高かったので、結果として平均寿命が低いのであり、10歳を過ぎると普通に生きたのだ。今では乳幼児に対する医療が進んで、動物のように何人も子供を産まなくて済むようになった。昔の人が多産だった背景には乳幼児での死亡が多かったのである。
このように誤解から江戸時代の医療は遅れていると思いがちだが、そうではないことを資料から証明してみせる。
そしてもう一つ、明治維新に匹敵する意識革命、それは敗戦である。日本のものはみな悪くて遅れている、西洋のものが新しくて正しいと思ってしまった昭和20年。おかげで民間伝承や家庭の医学は鳴りを潜めてしまった。
JIN-仁-の時代である江戸時代は、医療技術こそ現在と比較すれば遅れているのは当たり前なのだが、医者も患者もわれわれが思っている以上に今並みにしていたのである。
先入観と誤解と欧米かぶれが愚かしいことも教えてくれる本である。
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