チャレンジくんという1980年前後のまんが本を入手した。
これは当時国鉄が「
いい旅チャレンジ20,000km」という国鉄全線を走破するキャンペーンをしていたので、それにタイアップした形で、国鉄系の弘済出版社から発行されたマンガである。全5巻。
作者は自転車で日本一周をする漫画「
サイクル野郎」などの作品のある荘司としお先生。自転車が鉄道に置き換わったような作品だ。
国鉄の「いい旅チャレンジ20,000km」キャンペーンは1980年〜1990年の10年をかけて行ったキャンペーンで、宮脇俊三氏の国鉄全線を乗りつぶす紀行文学「
時刻表2万キロ」に触発されたものである。それまで一部のマニアの金字塔のような"遊び"が一躍脚光を浴びたのだ。
「いい旅チャレンジ20,000km」は、全国鉄の路線242線区を走破しようとするもので、まずどこかの国鉄路線の始点と終点の駅で撮影した、駅や本人が分かる写真を事務局に送る。すると会員証が送られてくる。以後は各線区の始点と終点の写真を送り、10線区、20線区などの節目には認定証や副賞がもらえた。キャンペーン開始当時は242線区あったが、ちょうど国鉄⇒JRの端境期にあたり廃線も多く、最終的には200線区を下回っていた。
私も国鉄美幸線に乗って会員登録をして会員証をもらったが、その後はキャンペーンとは関係なしに完乗をした。会員証は捨てていないが、今回心当たりを探したが出てこなかった。
「チャレンジくん」はその後「チャレンジ
君」として「国鉄」を「JR」に差し替えるような修正をして100均のダイソー文庫から2002年に1、2巻が発行されたが、そこはダイソーで3巻以降が発行されることはなかった。だから全巻を読みたかった。
今ではAmazon Kindleなどの電子出版でも読めるので、電子化は有益だ。
第1巻「いい日 旅立ち」
鉄道模型(Nゲージ)が好きな中学3年生・速見真吾は、学友・角野 学とともにチャレンジ20,000kmを始めた。
だが、乗車中、偶然にも銀行強盗犯と同乗してしまい、ついには人質となってしまう。拳銃を突きつけられた真吾は生き延びることが出来るか?
(原書:1981年9/1刊行)
第2巻「山陰と男の涙」
チャレンジ20,000kmを始めた中学3年生・速見真吾と、学友・角野 学は、偶然、ホテル王のお嬢様で同学年の小暮エミと知り合う。
エミに「本当の母親が別にいるので、その実母捜しを手伝って欲しい」と言われ、3人でヒントを求めて山陰地方へと鉄道を使って向かうのだった。
(原書:1981年12/1刊行)
第3巻「吹雪の中のローカル線」
チャレンジ20,000kmがきっかけとなりホテル王の一人娘・小暮エミと知りあった中学3年生・速見真吾は、エミの実母を捜して青森に向かった。そしてついに二人はエミの実母・中沢シズエと出会う。だが、シズエの本当の子はエミではなく真吾だという。戸惑う真吾。さらに、シズエを付け狙う殺し屋が現れ、シズエに向かってライフルを構える。秘密を抱えたままシズエは殺されてしまうのか?
(原書:1982年2/1刊行)
第4巻「終着駅とハマナスの花」
チャレンジ20,000kmを続けている速見真吾と友人・角野 学は無事高校生になった。
時間的制約がなくなり、日本各地の鉄道を走破する二人。だが、その最中も真吾は、行方不明になっている実母・中沢シズエが気になっていた。そんな時、暗号めいた不思議な手紙が届き、それに誘われるように、北海道に向かうことになる。物語、ついに佳境…!
(原書:1982年4/1刊行)
第5巻「無情の最終列車」
チャレンジ20,000kmを続けている高校1年生・速見真吾は、実父を殺したホテル王・小暮大造のアリバイを崩そうと行動を開始する。
そして、ついに鹿児島県指宿で大造と直接対決する。
真吾の隠された秘密とは…。そして、大造のアリバイは崩せるのか? ついに完結!
(原書:1982年7/1刊行)
このあらすじでわかるように、紀行漫画ではなく殺人事件を追うようなサスペンス漫画である。そして本物の鉄子には絶対にいないような美女が随所に登場して混浴にも入るが、ありえません。
「いや、それはおまえだからないのであって、おれはあるよ」と言う人はコメント欄でお知らせください。
老後の楽しみに全5巻を読んでみよう。
って、一気に5巻全部を読んでしまった。老後も終わってしまったか。
複雑な人間関係が入り乱れた面白い作品だった。
そして、1980年ごろの列車旅、今は亡き夜行列車、寝台列車、ローカル線、丸い顔の新幹線などが出てきて、昔の汽車旅を思い出させてくれた。